サガン「悲しみよ こんにちは」あらすじ&相関図で解説

フランス文学/フランソワーズ・サガン/映画化原作

「私、あなたがちょっと怖かったのよ」アンヌが言った。

「どうして?」わたしは訊いた。

もしわたしが反対したら、ふたりのおとなが結婚できなかったかのような言い方だった。

「あなたが私を怖がってるんじゃないかと思って」そう答えると、彼女は笑いだした。

―父レイモンと結婚することをアンヌから告げられるセシルー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★☆☆

物語の長さ ★★☆☆☆

要背景知識 ★★☆☆☆

大人たちのプライドを翻弄する、若い少女の気まぐれ。
彼女が犯してしまったその幼い過ちは、洗練された女性の精神によって吹き消される…。
若干19歳ながら美しい文章力を表現し、センセーショナルなデビューを飾ったサガンの代表作!
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①夏のバカンス、別荘にアンヌが合流

父レイモンが借りた地中海の別荘に、娘のセシルは父の愛人エルザと3人で夏季休暇のバカンスに出発します。
快適な別荘の浜辺でセシルは大学生の青年シリルと出会い、惹かれ合います。
3人の楽しい別荘地生活が始まって一週間が経ったころ、父レイモンの仕事仲間アンヌが同居しにやって来ます。
洗練された女性アンヌの魅力にセシルは感銘を受けますが、アンヌはセシルの節度や勉強を心配します。
青年シリルと親しくなったセシルは、彼のヨットで初キス。

②エルザが別荘を去り、アンヌと父が婚約

父レイモンがアンヌと愛し合うようになり、取り残されたエルザが別荘を去ります。
そしてアンヌは父と結婚するつもりだとセシルに告げ、このバカンスが終わってパリに戻ったら結婚式を挙げるとのこと。
アンヌは自然に母親役を意識してセシルの生活を指導するようになり、セシルは自分らしい奔放な生活を送れなくなる危機感を抱きます。

③セシルがひらめいたアンヌ追放計画に…

セシルは別荘の玄関で、荷物を取りに来たエルザと鉢合わせます。
彼女がまだ父に未練があると確信したセシルは、エルザと父のよりを戻しアンヌを追放する計画を思い描きます。
若いエルザが別の男性と親しくしているのを父に見せて嫉妬させるため、セシルは恋人のシリルにも協力を承諾させます。
そしてエルザと青年シリルが森でいちゃつく芝居をまんまと目撃し、父レイモンの顔は蒼白!

④愛を取り戻すため…エルザが青年シリルと熱演

若くて美しい元愛人のエルザが他の若い男と楽しんでいるのが我慢できず、嫉妬で険しくなる父レイモン。

勉強していると嘘をつき、青年シリルと深い恋仲になることに夢中のセシルに対し、怒ったアンヌが彼女を部屋に閉じ込めます。

アンヌに謝りたいと願い出るセシル。うわの空の父レイモンは、エルザが気になっている様子…。

⑤アンヌとエルザの間で揺れる父レイモン

友人から招待されたパーティーにやって来た父レイモンは、アンヌがいるにも関わらず、エルザが青年シリルを連れ添いながら現れるのを見て動揺します。

エルザへのやましい気持ちから、アンヌにもっと愛情を示そうとする父レイモン。演じるのを嫌がる青年シリルを慰め、愛に応える娘のセシル。

しかし何も知らないアンヌはただ、結婚する幸せに浸っています。

⑥アンヌへの謝罪…埋まらない後悔

しかし、とうとうエルザと密会している婚約者レイモンを目撃してしまうアンヌ!

たちまち車に乗って別荘から飛び出します。

セシルが通行を遮り、出て行くのを泣いて引き止めても、絶望に暮れたアンヌは車で走り去ってしまい…。

取り返しのつかない軽率な行動で大切な女性を失ったと後悔するセシルと父は、アンヌに謝罪の手紙を書きつづります。

そこに鳴り響く、電話のベル。アンヌからだと喜ぶ二人が電話に出ると、彼女が事故を起こしたとの知らせが…。

コラム:芸能人顔負けのゴシップ作家サガンに学ぶ、奔放女性の美学

「安心、安定、安全は人生の敵です」

波乱万丈の人生を駆け抜けたフランスの女流作家、フランソワーズ・サガン。

18歳という若さで執筆した本デビュー作「悲しみよ こんにちは」が世界中でベストセラーになって一躍有名人となり、2度にわたる結婚、両性愛者(バイセクシャル)で夫がいながら男女問わず愛人を持ち、スポーツカーを乗り回したあげく重傷を負った自動車事故、ギャンブルに大金をつぎこみ、薬物やアルコールに溺れ、脱税で訴えられたスキャンダルなど…、ハリウッドスター顔負けのゴシップ女王でもあったようです。

 

しかしそんなサガンが破天荒と併せ持つ美しい一面、人生観に対する独自の美学も、世代を超え今も多くの人々を魅了してやみません。

「優しさのない人は、相手ができないことを求める人です」

全身全霊で人を愛し、自由を愛し、孤独を愛した人生でもあったとも言えます。

 

作品はあくまで自分の体験談ではないと語ったサガン。小説のような人生とは別の、小説の中の人生。あまりにもリアルに描写されたセシルでさえ、南フランスに訪れた架空の少女にすぎなかったということなのでしょう。

 

「悲しみよ こんにちは」、読んでみていかがでしたか?

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それでは!

 

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