マン「ヴェニスに死す」あらすじ&相関図で解説

ドイツ文学/トーマス・マン/ノーベル文学賞/映画化原作

とある日の午さがり、アシェンバハは朝の病める町中深く、美少年のあとをつけて踏み入って行った。迷宮の朝の裏町や運河の橋や小さい広場はどれもこれもよく似ている。その上、方角さえもはっきりしなくなったために、見当がつかなくなり、なんとかして恋慕っている少年の姿を見失うまいと一生懸命であった。

―本文よりー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★★★

物語の長さ ☆☆☆☆

要背景知識 ★★★★

誰もが認める芸術家の巨匠が、生涯をかけて追い求めても幻でしかなかった「美の極致」。
その理想をすべて生き写した美少年が目の前に現れたとき、名匠の権威はもろく崩れ去る…。
ノーベル賞受賞作家トーマス・マンが、ヴェネツィア旅行での実体験を元に書いた初期短編の代表作!
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①芸術家アッシェンバッハの実績と美学

本国ドイツで貴族の称号を得るほどの大御所作家、アッシェンバッハ。
初老を迎えるまでずーっと、大衆ウケする執筆活動をマジメに励んできたにも関わらず、本当の自分はもっと崇高な美学を求めてて、っていう小難しい美意識の解説文が続き…序盤から正直しんどいっス(笑)。まあ結果的には、美少年に恋する前フリ部分になるわけで。
ともかく執筆生活に楽しさを感じたことがなかった彼は、癒しを求めてヴェネツィア旅行にいざお出かけ。

②ヴェネツィア行きの旅客船にて

客船に乗ったアシェンバッハは甲板でくつろぎながら、品のない振る舞いをする老人や周囲の乗客を観察してはイライラするばかり。船を降りて乗り継いだゴンドラは、揺られながら生暖かい風(シロッコ)を受けて気持ちよくなっていたのに、無免許だった船頭が発覚を恐れて逃亡。先の思いやられる道中で不安のまま、無事ヴェネツィアのホテルに到着。

③ホテルで出会った美少年タージオ

一流ホテルのロビーで新聞を広げながら、多国籍の人種で賑わう宿泊客を眺め渡すアッシェンバッハ。そこで見つけた外国人客の美少年…アッシェンバッハはその美貌に一目で心を奪われ、ラブズずっきゅん!
ギリシャ彫刻のような少年の風貌と個性的な魅力…つまり、これまで追い求めていたアシェンバッハの絶対的な美学にドンピシャだったわけです。どうやら少年は「タージオ」という名で呼ばれているらしい。
しかし、水の都ヴェネツィアを散歩していると腐った水の匂いで体調不良になり、明朝ホテルを出るとフロントに告げ、心の中でタージオに別れを惜しみます。

④ヴェネツィアに逆戻り…タージオへの慕情

翌朝、アッシェンバッハはすかさずホテルをチェックアウトしてゴンドラに乗り、駅に到着します。
停車場で蒸気船が近づいてくるのを眺めていると、手違いで荷物が別ルートの便へ送られたことが発覚!
荷物を受け取るため、再びあの一流ホテルへ戻るはめに…。
トゲトゲしいアッシェンバッハのことだから当然怒るかと思いきや…もう一度タッジオの姿を拝めることに感謝して喜んじゃう始末。

⑤ホテルにやってきた大道芸の一団

それからのホテル滞在では、タージオの隠れ観察者としてアッシェンバッハの心躍らせる毎日が過ぎていきます。
ビーチでたたずむタッジオ少年の美しさに見とれ、ただただ陶酔するアッシェンバッハ御大。
世紀の傑作を前にした偉大な芸術家としては、覗き見ながら鑑賞のたびに感激もひとしおです。
話しかけようと接近を試みても、一言も声をかけられない。想いは募るばかり。
夕食後のホテルの前庭で大道芸を披露する流しの一団に、宿泊客たちは拍手喝采の大盛り上がり。
冷めた目で眺めていたアッシェンバッハは、客席で集金している大道芸のギター弾きに気になる水のいやな匂いについて尋ねてみると、警察が予防措置を取っているので病気とは関係なく心配ないとのこと。

⑥ヴェネツィアに蔓延するコレラ

夏に向けて増えるはずの観光客はみるみるホテルから姿を消していき、運河の水や魚介類を口にしないよう市から警告が貼り出され、町には消毒薬の臭いが立ち込めている…。
旅行案内所に入ったアッシェンバッハに町の噂の真相を尋ねられた若い事務員は、心配ないというのは公の声明で実際は蔓延しているコレラによって死者が増えていると明かされ…悪い予感が的中。
理髪店に行って髪を整え化粧を施し、若返ったような気分で迷宮のような路地を歩いていくタージオの後姿を追いかけて、追いかけて…。
タージオを完全に見失ったアッシェンバッハは、突然の頭痛と冷や汗で体の震えが止まらなくなり…。

あとがき:

「ヴェニスに死す」とは直接関係のない話。

先ほど、2019年のノーベル文学賞の受賞者が発表されました!

去年はアカデミーメンバーの不祥事発覚で「該当者なし」の結果だった分、今年は2人選ばれたようで。

受賞者は、ポーランドの女性作家オルガ・トカルチュクさんと、オーストリアの男性作家ペーター・ハントケ氏。

トカルチュクさんの授賞理由は「豊富な情熱で境界を越えた命の形を表現する想像力」、ハントケ氏については「人間の経験の周縁と特異性を言葉の想像力で探求した」と説明あり。

お二人の受賞をお祝いするとともに、近いうちに改めて拝読しここで紹介したいと思います。

この度はおめでとうございました!

いや~めでたい! 読むのが楽しみだー!

 

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