カミュ「異邦人」あらすじ&相関図で解説

フランス文学/アルベール・カミュ/ノーベル文学賞

私はマリィの方は見なかった。私にはその暇がなかったのだ、というのは、さっそく、裁判長が奇妙な言葉つきで、あなたはフランス人民の名において広場で斬首刑をうけるのだ、といったからだ。そのとき、私は顔という顔にあらわれた感動が、わかるように思われた。

―第二部よりー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★☆☆

物語の長さ ★★☆☆☆

要背景知識 ★★★☆☆


異端児って、どんな人?
個性的な生き方を貫いている、型破りな人。
だから社会からは常に煙たがれ、叩かれる存在でもある。
でも、誰かの真似をして生きる不特定多数の人たちが、非凡人をよってたかって責めるのはやめてほしーな。
思考停止したあなたたちの強みは「ただの大人数」なだけだから。ね、ママン。
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①養老院で暮らしていた母の通夜

事務所勤めのムルソー青年に、母の死を知らせる電報が養老院から届きます。
休暇を取って養老院に赴き、愛する母の葬式に出席しますが、死を現実的に受け止めるムルソーは涙を流すこともなく、特に感情を示すことはありません。
葬儀に参列していた母の恋人らしき人物を知り、無事に母の埋葬を見届けてムルソーは養老院をあとにします。

②翌日、海水浴場で再会したマリィと戯れ合う

葬儀の翌日、事務所の元同僚である女性マリィと海水浴場で再会します。
意気投合した二人は喜劇映画を観に行って大笑いし、ムルソーの部屋で一夜を明かします。
休み明けの月曜日、仕事から帰宅したムルソーは隣人レエモンの部屋に招かれ、親交のしるしにとワインを飲み交わします。
そして、ある情婦に好意を踏みにじられたレエモンから、彼女を懲らしめるための手紙を代筆してほしいと頼まれ、ムルソーはすぐに引き受けます。

③隣人のレエモンが娼婦を殴って警察沙汰になる

週末、ムルソーが部屋でマリィと過ごしていると、隣の部屋でレエモンが女と罵り合い、暴力沙汰を起こしている騒ぎが聞こえてきます。
廊下へ出て様子を見守る中、興奮状態の二人は通報を受けた警官によって鎮圧。情婦は家に帰され、レエモンは後日、警察署に出頭するように告げられます。
レエモンはムルソーを連れて警察署に行き、「情婦がレエモンを裏切ったのだ」とムルソーが証言したおかげで、レエモンは警告だけで済みます。

④レエモンを尾行してきたアラビア人を銃殺する

レエモンの誘いで、ムルソーはマリィを連れて小さな別荘のある浜辺へと出かけます。

しかし不審なアラビア人の一団が、浜辺に向かうレエモンたちを執拗に尾行して来ます。

おそらくレエモンと騒動になった情婦が兄に相談し、仲間を連れて報復に来たらしい。

用心のため、レエモンから拳銃を渡されるムルソー。太陽が熱が照り返す浜辺。

レエモンがアラビア人の短刀で負傷したのを知り、ムルソーはアラビア人の1人と対峙し銃で撃った後、倒れたアラビア人に残りの弾4発をすべて撃ち込みます。

⑤刑務所に入れられ、死刑判決を受ける

逮捕されたムルソーは何度も尋問を受け、裁判にかけられます。

母の死に直面しても涙を流さず、その翌日には女性と笑い転げて情事にふけり、倒れているアラビア人に残りの弾4発をさらに撃ちこんだこと。つまり被告人ムルソーは冷酷な人間であると、検事は指摘します。

長時間の陪審の結果、裁判長はムルソーに斬首刑の判決を言い渡します。

⑥訪問に来た司祭を罵倒する

死刑を宣告されたムルソーの監房に司祭が訪れ、懸命に懺悔を促しますが、ムルソーは断固拒否。

神への改心によって罪は赦される…と教えを説く司祭の襟元をつかみ、ムルソーは「祈りなどするな!」と怒鳴り、「周囲に同調しているだけの生き方」を罵倒し始めて…。

コラム:ムルソーが人を殺した動機…それは「太陽のせい」?

まず、ムルソーには「愛」という一般的な感情を持ち合わせていないように見えます。

マリィに「私のこと、愛してる?」と聞かれても、ムルソーは…「それは何の意味もないけど、たぶん愛していない」とだけ(笑)。

また、マリィから結婚話を持ち掛けられても、ムルソー曰く「そんなことは何の重要性もないけど、君が望むなら一緒になっても構わない」。

それでもマリィは負けません。殺人の罪でムルソーが逮捕されても彼女は面会に訪れ、「出所したら結婚しましょう!」と告げるほど。…メンタル強すぎです。

一見、そんなマリィの健気さばかりが印象に残りますが…検事が主張するように、ムルソーは本当に冷酷な人間なのでしょうか?

 

一般人は演技を交えてコミュニケーションを取らないと、社会では生きていけません。

しかしムルソーは、演技をし嘘をつく行為を一切拒否して生きているのです。

ただ感じること、ただ存在すること…この「真理」だけを信じているのでしょう。

もちろん、神(宗教)も信じることができません。それが、この物語の舞台である厳格なカトリック教徒の社会であっても。「異邦人」たる所以です。

 

だから裁判で殺人の動機を尋ねられ、なぜムルソーが「太陽のせい」と答えたのかについても、太陽のように万物をすべてを明るみにする、噓偽りのない生き方を貫いてきたせいだ、と解釈できます。

 

作品を読めばわかると思いますが、ムルソーは誰に対しても分け隔てなく優しい態度で接しているんですよね。

もしかするとムルソーは、「実は一般人の誰もが憧れる強い人間」かもしれません。

でも彼のような新人が自分の部下として入社してきたら…。うーん、ちょっと面倒かも(汗)。

 

「異邦人」、読んでみていかがでしたか?

意見や感想など、コメントをお待ちしています。

それでは!

 

 

コメント

  1. 考人 より:

    分かりやすくまとめてあったあらすじを追いやすかったです。
    不条理文学の傑作ですね。やはりこの小説の最大の疑問は「太陽のせいだ」にあると思われますが、「太陽のように万物をすべてを明るみにする、噓偽りのない生き方を貫いてきたせいだ」というのは、なるほどなあと感じました。仰る通り、ムルソーには「愛」がないように見えるばかりか、他の感情すらも薄い感じがします。自己というものを客観視しているというか、受動的というか。内容だけでなく文体レベルで不思議な印象を受ける小説ですね。

    • 杜矢 A士 杜矢 A士 より:

      コメント頂きありがとうございます!
      おっしゃる通り、読み手によって多様な解釈ができる個性的な主人公だと思います。
      ある意味で動物的な、大自然の感覚で人間社会を生きているような架空のケースモデルとも思えました。

      直近で「異邦人」の英語版解説動画を作成しました。
      https://www.youtube.com/watch?v=gDllo-bb5Is
      全編英語なのでもしかするとお役に立てないかもしれませんが、もしよろしければご覧頂けると幸いです。

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