モーパッサン「脂肪の塊」あらすじ&相関図で解説

フランス文学/ギ・ド・モーパッサン

紳士淑女ぶったこれらの腹黒い連中は、自分に犠牲となることを強いておきながら、いざ用が済むと、無用な汚らしい品物のようにうち捨てたのだ。

―本文よりー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★☆☆

物語の長さ ☆☆☆☆

要背景知識 ★★★☆☆

人間の価値って、どこで決まる?
戦争を背景に、愛国心を持つ献身的な娼婦の恩を平然と踏みにじる、社会的地位の高い偽善的な上流階級者たち…。
人間の内面にある醜さをあぶり出す、モ
ーパッサン渾身のデビュー短編作品!
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①プロセイン軍に支配された地元を捨て、馬車に乗る人々

戦争によってプロセイン軍に占領されたフランスにある地元の町を離れ、新天地の港町で生活を立て直そうと乗合馬車に乗る、同行者10名の人物紹介の導入部です。
脂肪の塊(ブール・ド・スュイフ)と呼ばれる麗しのぽっちゃり娼婦エリザベス・ルーセ、厳格な民主党員のコルニュデ、ワイン問屋を経営する小金持ちのロワゾー夫妻、上流階級の夫婦が2組、修道女が2人の計10人が馬車に揺られ、先行きの不安な旅が始まります。

②馬車の中、ブール・ド・スュイフが空腹の連中に食事を分け与える

悪天候で馬車はなかなか進まず、同乗している娼婦に冷ややかな態度を示しながら空腹に耐えかねていたんですが、一週間分の食料を用意していたブール・ド・スュイフは皆の前で食事を始めます(笑)。
ロワゾーが口火を切っておこぼれに与りたいと願い出ると、ブール・ド・スュイフは全員に気前良く食事を分け与えます。
娼婦ブール・ド・スュイフに対する同乗者の態度は一変し、どれほど祖国フランスを愛しているかという彼女の熱弁にまで、無条件で称賛を讃えるようになりました。

③敵軍占領地に侵入してしまい、馬車が道中を阻まれる

しかし、旅はなかなか順調に進みません。
馬車が停まりドイツ語が聞こえてきたことで、乗客たちはプロセイン軍の占領地に足を踏み入れたのだと気付きます。
ドイツ人の指揮官に馬車から降りるよう命じられ、理由も説明されずただ村の宿に無期限外出禁止で押し込められます。

④意図が分からず、ひたすら宿屋で足止めされる乗客たち

旅行者たちは二日間不安に苛まれていましたが、ついにブール・ド・スュイフからプロセイン軍の指揮官の意図を聞かされます。

それは、彼女が指揮官と寝るまで旅行者が拘留されというもの。

ブール・ド・スュイフは愛国心からプロセインを激しく憎んでいるので、その指揮官から口説かれることに相当憤っている様子。

同行者たちも指揮官の傲慢さに激怒し、ブール・ド・スュイフを支持します。

⑤我慢できなくなった連中が、ブール・ド・スュイフを説得

しかし同行者たちは「そもそも自分たちが足止めされている原因は、ブール・ド・スュイフが指揮官の要望を拒んでいるからだろ?」と、一晩のうちに憤りの矛先を彼女に向け変えてしまいます。

翌二日間、彼らは必死で歴史上の偉人や聖人引き合いに出し、論理や道徳を持ち出して、

指揮官と寝ることの正当性を娼婦のブール・ド・スュイフに寄って集って説得を企てます。

⑥乗客のために、やむなく犠牲になるブール・ド・スュイフ…その顛末

同行者たちからあの手この手で迫る美徳によって、ついにブール・ド・スュイフが説き伏せられます。

指揮官と寝るブール・ド・スュイフを尻目に、同行者たちは解放される喜びでお祭り騒ぎ。そんな彼らの振る舞いをコルニュデが批判します。

翌朝、意気揚々と馬車に乗り込む旅行者たち。車内ではブール・ド・スュイフを敵軍の士官と寝た娼婦として汚物のように無視し、持参した食事を自分たちだけで食べ始めます。

ブール・ド・スュイフは屈辱と同乗者に対する怒りで震える中、コルニュデは…。

コラム:普仏戦争の歴史背景…プロセインってなに?

 

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