カフカ「変身」あらすじ&相関図で解説

ドイツ文学/フランツ・カフカ

「こいつがわしたちのことをわかってくれさえしたら」と半ばは問いただすように父親が言った。妹は泣きながらはげしく手を振った。そういうことはありえないという意味なのである。

―毒虫に変身した長男グレゴールが災いしかもたらさないことを確信した、家族の反応ー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★☆☆

物語の長さ ★★☆☆☆

要背景知識 ★★★★

社会問題にもなっている、大人の「引きこもり」。
主に職場での人間関係が原因で、仕事に行けなっちゃう人たち。
「甘えんな!」って批判する意見もあるけど、支えている家族はもっと大変。
ほーらほら、今日もずっと部屋からゴゾゴゾと物音が聞こえてくる…。
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①外交販売員グレゴール、朝起きると毒虫に大変身!

安心して下さい。人間が醜い虫にゆっくりと化けていく…というお話ではありません。すでに冒頭から変身しておりますんで(笑)。
というわけで出勤前の朝、ベッドで目覚めたグレゴールは自分が巨大な虫になっていることに驚きます。
しかし体を起こせないまま、商売で失敗した両親の借金を返すまでは仕事を辞められない…などと不満を募らせているうちに時計を見れば、なんと出勤時間がとっくに過ぎてるじゃありませんか!

②支配人の訪問で家族に正体がバレる

出張に出発する時間が過ぎているのに起きてこないグレゴールを心配し、部屋の扉越しから家族の呼びかける声が聞こえてきます。
何とか体を動かしてベッドから起き上がろうとグレゴールが奮闘しているうちに、勤め先の支配人までが様子を見に伺います。
支配人から勤務怠慢を扉越しに注意され、部屋の中から弁解するものの、どうやら言葉が通じないらしい。
仕方なく部屋のドアまで這いずり、苦労の末ようやく鍵を開けると…両親や支配人は大パニック! 母親は床にへたり込み、父親は泣き出す始末。
戸惑うグレゴールは、わめいて逃げる支配人に追いすがろうとしますが、父親のステッキによって再び部屋の中へと押し戻されます。

③妹グレーテの献身的な世話

その日以来、グレゴールは部屋の中でひっそりと暮らすようになります。
そんな醜い姿に変わってしまったグレゴールに、妹のグレーテが食事の差し入れや部屋の掃除など献身的な世話をします。
グレゴールは一日中ずっと窓の外を眺めて過ごし、寝る時や妹が部屋に入ってくる時は、寝椅子の下に身を隠すようになります。
扉越しに聞こえてきた家族の話では、グレゴールが働けなくなった今でもしばらくは生活できる貯えがあるとのこと。

④息子から逃げる母親、息子を攻撃する父親

やがてグレゴールが壁や天井を這うのに慣れてきたと気づいたグレーテは、邪魔になる家具類をどけてやろうと考え、母親と協力して部屋から運び出そうとします。

グレゴールはその作業に気をつかって身を潜めますが、ふと自分が人間だった頃の痕跡を取り除いても良いのかという思いを抱きます。

そして壁に掛かっていた雑誌の切り抜きにしがみつき、その意思を伝えようとするグレゴールのおぞましい姿を見た母親が気を失ってしまいます。

新しい勤めから帰宅していた父親はこの事態を重く受け止め、グレゴールにリンゴを投げつけ、深い傷を負ったグレゴールはまともに這い回れなくなります。

⑤ヴァイオリンの音色に誘われ、ついに這い出るグレゴール

父親の投げたリンゴが背中にめり込み、グレゴールは一ヶ月も苦しみます。

その間、家族は切り詰めた生活を強いられながらも、母と妹は新しい働き口を見つけ、グレゴールの世話も半ばないがしろの状態でした。

新しく雇い入れた大柄の老女は、偶然目にしたグレゴールの姿に動じることもなく、彼をからかいに部屋へ来るようになります。

また、家の一部屋を3人の紳士に貸し出すため、グレゴールの部屋は邪魔な家具を入れておく物置になってしまいます。

ある日、グレーテが居間にいる3人の紳士にヴァイオリンの演奏を要望されます。

グレーテが奏でる美しいヴァイオリンの音色に感動したグレゴールは、うっかり部屋から這い出て居間に来てしまいます。

⑥下宿人に去られ…ついに妹グレーテ、キレる?

グレゴールの姿を見られたくない父親は慌てて紳士3人を部屋に戻そうとしますが、それが無礼だとして彼らの怒りを買ってしまいます。

3人の紳士は即刻この家を引き払い、借りていた部屋の下宿代も払わないと宣言します。

失望する両親に対しグレーテが、兄でなくなった毒虫グレゴールを見捨てるべきだと提案します。父もその意見に同意する姿を見て、やせ衰えたグレゴールは部屋に戻っていき…。

コラム:父親がグレゴールに致命傷を負わせた、脅威のリンゴとは?

目覚めたら毒虫になっているという、史上最恐の寝起きドッキリから始まるこのお話。

ドッキリを告げてくれる人が現れることもなく、マジに恐がっちゃう家族たちにただひたすら嫌われて終わる奇妙なストーリーに、「何だかよく分からなかったけど…これ、名作なんだよね?(笑)」って反応になる人も多いのでは。

このモヤモヤ感を晴らすには、作者カフカの背景が重要になってきます。

 

ユダヤ人であるカフカ一家は、当時のドイツでユダヤ教のしきたりを隠し、キリスト教徒らしく振舞わなければならないことから、自分らしさとは何かという問題が常にのしかかっていました。

生きるために素性を隠して生きることを選んだ家族に対し、素性を隠して生きることをやめたグレゴールは、周囲にとって役立たずの醜い害であり、家族の足を引っ張る存在でしかなくなったのです。

 

そんな息子を攻撃するために父親が投げたリンゴは、ユダヤ教・キリスト教に共通する聖書の冒頭、天地創造から神が創ったアダムとイブの話で、リンゴは主人への裏切りの象徴として登場します。

その実を口にしたことで楽園を追放され、永遠の命を失ったアダムとイブの子孫である人間は、神に犯した罪を一生償わなければならないというものです。

 

まさに父親のリンゴで負傷したグレゴールは、主人から見限られて「死を与えられた」のです。

 

「変身」、読んでみていかがでしたか?

意見や感想など、コメントをお待ちしています。

それでは!

 

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