「果してぼくは婆さんを殺したんだろうか? ぼくは婆さんじゃなく、自分を殺したんだよ! あそこで一挙に、自分を殺してしまったんだ、永久に!」
―老婆殺しをソーニャに告白するラスコーリニコフー
文章難解度 ★★★☆☆
物語の長さ ★★★★☆
要背景知識 ★★★★☆
主要人物を4人だけ覚える
ざっくり相関図
シーン別:攻略ポイント
①高利貸しの老婆殺害計画、そして実行
②事件後の体調悪化に煩わされ、周囲の人たちと衝突
③親友に犯行を疑われて…ポルフィーリィとの初対決!
家族の貧窮を救うためだけに、妹が金持ちなだけの無礼な婚約者と結婚することに反対するものの、その財産によってラスコーリニコフの展望を期待する母と妹は、彼をなだめようとします。
④ポルフィーリィとの対決再び、無関係な若者が自首?
妹に想いを寄せているスヴィドリガイロフから結婚の破談に協力するとラスコーリニコフに持ちかけるものの、結局は婚約者本人の横暴な発言で母と妹の反感を買い、婚約解消となります。
ラスコーリニコフはソーニャの部屋を訪れ、置いてあったリザヴェータの聖書を見つけると「ラザロの復活」を朗読してほしいとソーニャに食い下がります。
戸惑う彼女に「明日、リザヴェータを殺した犯人を教える」と言い残して警察署に向かいます。
そこで再びポルフィーリィに苦戦を強いられますが、老婆殺害犯を名乗るペンキ屋の若者が突如現れ、この思いがけない展開にラスコーリニコフは窮地から逃れます。結局このニセ犯人、何だったのかって話ですけど(笑)。
⑤故人マルメラードフの法事で大騒動…そして罪の告白
結婚を諦めきれず、破談にされてラスコーリニコフに恨みを持つ妹ドゥーニャの元婚約者は、事故死したマルメラードフを弔う法事の場で、ソーニャを金銭泥棒に仕立て上げます。
その策略を見破ったラスコーリニコフが彼女を救いますが、アパートに逃げ帰るソーニャを追いかけ、彼女の部屋で「自分が老婆と妹リザヴェータの殺人犯だ」と告白します。
しかし、隣の部屋を借りていたスヴィドリガイロフが一部始終を盗み聞きしていて…。
⑥ポルフィーリィとの最終対決…罪は免れるのか?
ラスコーリニコフの部屋に直接ポルフィーリィが訪ねて来ます。
本物の犯人はペンキ屋の若者ではなく、やはりラスコーリニコフだと主張した上で自首をすすめるも、ラスコーリニコフはシラを切り続けます。
スヴィドリガイロフは盗み聞きしたラスコーリニコフの罪の告白をネタに、妹ドゥーニャに結婚を迫ります。しかし完全に拒否されたことでピストル自殺します。
そして、とうとう罪の意識に耐えきれなくなったラスコーリニコフは自殺を考え、母に別れを告げます。恐ろしい結末を予感する母だけど、どうすることもできず…。
コラム:もうひとつの「罪と罰」…マルメラードフ夫妻のオールザッツ漫才!
そこまで敬虔なクリスチャンであるソーニャが、なぜ娼婦になったのか。
その原因はすべて、酔っ払い親父マルメラードフのダメっぷりでしょう。
ギャンブル好きの前夫が借金を残して死に、3人の幼い連れ子と途方にくれていたカテリーナと、娘ソーニャと貧しい暮らしていたマルメラードフが再婚。
カテリーナは肺病を患ってしまうし、一家の主であるマルメラードフが酒に溺れてしまったとあっては、当然家族が食べていけなくなります。
そこで若いソーニャが、貧しい家族を助けるために娼婦になったのです。
…が、このクズ親父マルメラードフの暴走は止まりません。
ソーニャが体を売って稼いだ金を持ち逃げし、仕事も無断欠勤したまま何日も居酒屋で酒浸りになっているのです!
そして店に入ってきたラスコーリニコフを呼び止め、こう呟きます。
「学生さん、ワシは憐みと同情が見つかるような気がして、酒を飲んでいるんだ…」と。
ベロベロニ酔いつぶれるマルメラードフを介抱し、家に送り届ける心優しいラスコーリニコフ…のはずが!
妻カテリーナに、感謝されるどころか不審人物扱い。
玄関先で倒れているマルメラードフの髪を引っつかんで罵り叫ぶと、妻から罰を受けている喜びでつい「う、うーれしいんだよ、学生さん!」とラスコーリニコフに訴えながら匍匐前進で引きずられるマルメラードフ…。まるで凄まじいコントか漫才を見ているようです。
このような「罪(ボケ)」と「罰(ツッコミ)」の夫婦漫才が何度か拝めるのも、この作品ならではの魅力なんでしょうか。
それにしても、こんな家族の境遇に同情して犯行に及んだラスコーリニコフって…。
「罪と罰」、読んでみていかがでしたか?
意見や感想など、コメントをお待ちしています。
それでは!
コメント
こんにちは。私は先月、新潮社の上下巻を始めて読みました。
とてもおもしろかったのですが、内容理解のため再読してます。
ちょっとわからない点がいくつかあり、
そのうちの一つが
ルージンとソーニャが同席するきっかけがどこにあったか、です。
マルメラードフとルージンは接点がないようにも思えたので、
なんで法事に参加したんだろうな、、と。
失礼しました。
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ございません。
現在外出中で本が手元になく、
記憶を辿ってとりあえず答えるなら
ルージンはラスコーリニコフと
ソーニャが知り合いだと知った上で
確かルージンと懇意にしてた友人?の前で
ソーニャにお金を寄付したように細工し
マルメラードフの葬式に行って
ラスコーリニコフの前でソーニャを
泥棒扱いにした、という流れだったような…。
すみません、もう一度本で確認して
再度ご連絡させて頂きます。
また「杜矢A士のアニメーション文学」
というYouTubeチャンネルで
文学作品の解説動画を作っているのですが、
数ヶ月後に「罪と罰」を扱うつもりなので
今回のご質問も参考にさせて頂きます。
初めまして。杜矢さま。
このサイトのページを随分前に読んだのですが、最近また読みたくなり、画像保存していた画を画像検索して辿り着きました。
前も思ったのですが、特にこの、罪と罰のページのラスコーリニコフとソーニャの絵が素晴らしく、それ以来、僕の中で、2人は
杜矢さんのこの絵のイメージになりました。
映画やTVドラマにもなり、色んな人が演じている2人ですが、杜矢さんの、この絵を超えるものはないですね(笑)
特に、ラスコーリニコフ!この、クセのありそうな、自我の強そうな、ややこしいキャラクターを表現したデザインは、絶品だと思います。
杜矢さんのこのサイトを思い出したのは、amazonで「罪と罰REMASTER」という書籍を出されてる方がいて、その方がほぼ全登場人物の絵をAIで制作して載せていたからなのです。
それを見て、「ラスコーリニコフは、杜矢さんの絵の方が良かったぞ」と(笑)
ソーニャの方は、どちらかと言われても、なかなか甲乙つけ難い出来です。
是非、見てみて下さい。
僕は、全登場人物を杜矢さんの絵で見たいですね(笑)
文学に詳しい人は沢山います。絵が描ける人も沢山いますが、作中人物をこれ程巧みに絵にしている方は、なかなかいません。
杜矢さん、最高です(笑)
ブックマークしましたので、これからは新しい記事を楽しみに読みたいと思います。
あ、出来れば、「復活(トルストイ)」「モンテクリスト伯」「レ・ミゼラブル」「ノートルダム・ド・パリ」「大地(パール・バック)」「クォ・ヴァディス」「白い牙」なども紹介して頂けたら嬉しいです(笑)
勝手なことを書いて、失礼致しました。
はじめまして。
コメント頂きありがとうございます。
非常に勿体ないお言葉を頂戴して誠に恐縮でございます。
ここしばらくYouTubeにて文学作品のあらすじを動画で紹介しております。
https://www.youtube.com/@aeijimoliyasanimationliter8049
現在はチャンネル名も新たに動画内容を改良して新作を準備しております。
おそらくですが、「文学ミュージアム」というチャンネル名に改める予定です。
YouTubeでも「罪と罰」を作成しましたが、キャラクターのイラストについては
いろんな絵のタッチを試してみようとして失敗した回のひとつです(汗)。
過去回もリニューアル後に機会をみて再編集するつもりでいますので、
その時はキャラクターのイラストも描き直させて頂きます。
次回の新作からしばらくは制作予定のタイトルが決定してしまっておりますが、
「レ・ミゼラブル」、「白い牙」、「モンテクリスト伯」については
いずれ制作するつもりでリストには入れておりますのでよろしくお願いします。
トルストイについてはまだ紹介出来ていないため、まずは代表作の
「戦争と平和」か「アンナ・カレーニナ」を優先して制作するかと思います。
「復活」はまだ読んだことがないので、機会をみてぜひ読ませて頂きます。
未熟な点も多々あるかと思いますが、今後とも何かとご教示頂けると幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。