ヘミングウェイ「老人と海」あらすじ&相関図で解説

アメリカ文学/アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ/ノーベル文学賞/映画化原作

鮫は頭を水の上に突きだし、さらに背中までむきだしにして襲いかかってくる。襲われた魚の皮と肉がみりみりと裂ける音がきこえた。が、老人はすかさずその頭をめがけて、両眼を結ぶ線と鼻から背に伸びている線とが交わる一点に、銛の先を突きさした。

―本文よりー

【読書指標】  

文章難解度 ★★★☆☆

物語の長さ ★★☆☆☆

要背景知識 ★★☆☆☆

長い人生の中で、得るものと失うもの。
また、獲得したものを失うかもしれない危機に直面したとき。
その不運や逆境に屈しない精神は、どこから沸いてくるのか。
機械による大量生産の時代だからこそ、プロフェッショナルな業師の存在価値が痛感できる、世界的名作!
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主要人物を4人だけ覚える

ざっくり相関図

シーン別:攻略ポイント

①漁の前日、テラス軒で少年と話す老人

メキシコ湾の沖で一本釣りの漁師として活躍していたサンチャゴ老人ですが、助手だった少年が両親から別の船に乗るよう言い渡されてからも、一匹も釣れない不漁が数ヶ月続きます。
テラス軒で、翌朝沖に出ると告げるサンチャゴ老人に、また二人で漁に出たいと語る少年。
夕食や釣りの道具を家まで運んでもらって少年と別れ、サンチャゴ老人は昔アフリカで見たライオンの夢を見て、目を覚まします。

②夜明け前に港を出発し、海の様子を観察する

夜明け前、サンチャゴ老人は暗い海に小舟を漕ぎ出します。
太陽が昇り明るくなると、軍艦鳥が円を描いて飛んでゆき、シイラの群れがトビウオを追う様子が見えます。
釣った小さな魚を餌にして、サンチャゴ老人は一人で大物を釣り上げる準備をします。

③餌にかかった巨大マカジキとの、3日間にわたる耐久戦

サンチャゴ老人がひと眠りしようと考えたとき、網の下の餌魚に大きなマカジキが食いついた重みを感じ取ります。
その巨大な魚は鉤(はり)の餌を咥えたまま、サンチャゴ老人の小舟を引っ張っていきます。

④意識を失いながらも…巨大マカジキを仕留める!

片手で綱を握りつつ少年がいない辛さを噛みしめながら、サンチャゴ老人は三日三晩にわたり不眠不休のまま巨大マカジキとの体力消耗戦に挑みます。

そしてサンチャゴ老人の意識も限界に差しかかった頃、徐々に浮き上がってきた巨大マカジキの横腹に銛を突き立て、仕留めることに成功します。

ただ、マカジキが想像以上の大きさだったために載せることができず、小舟にくくりつけて運び帰るしかありません。

⑤嗅ぎつけて次々に追ってくる鮫との死闘

その一時間後、マカジキを嗅ぎつけた鮫の群れが襲撃して来ます!

黒船危機一髪!…いや、老人危機一髪!(笑)

襲ってくるサメ、サメ、サメ。その眉間に銛を突き刺して抵抗するサンチャゴ老人の奮闘もむなしく、巨大マカジキは次々にかじられていきます。

その流れる血が、新たな鮫を呼び寄せ…。

⑥武器もすべて失って…無事に帰港できるのか?

突き刺した銛は沈む鮫に持って行かれ、ナイフも持って行かれ、きりがない鮫の襲撃にも棍棒で抵抗し続けるサンチャゴ老人。

巨大マカジキはすでに半分も食いちぎられています。

暗い夜の海に港はまだ見えず、鮫の群れは容赦なく襲ってきます。

しかし、最後の武器だった棍棒もついに失ってしまい…。

コラム:砂浜のライオン? サンチャゴ老人の不思議な夢

この作品を読み終わる直前で「あれ?」…って違和感を覚える人も多いはず。

漁から生還し、またもライオンの夢を見てぐっすりと眠るサンチャゴ老人。めでたしめでたし…かと思いきや、最後に謎めいた場面がフィナーレを飾ります。

テラス軒に立ち寄った旅行者たちが、サンチャゴ老人の小舟にくくりつけた巨大魚の長い背骨を指差して給仕に尋ねます。

 

旅行客(女)「あれ、なんでしょう?」

給仕「サメが…」

旅行客(女)「あら、鮫ってあんな見事な、形のいい尻尾を持っているとは思わなかった」
旅行客(男)「うん、そうだね」

 

この謎めいたラストシーンによって、実は巨大マカジキなんて仕留めていないんじゃないか…いや、そもそも漁に出ていないんじゃないか、という夢オチ説がネット上でちらほら浮上しています。

その夢オチ説の有力な手がかりが「ライオンの夢」で、サンチャゴ老人が漁に出る前と帰港後に見ているから、というのが理由のようです。

でもこれは単純に、英語が得意じゃない給仕の説明ミスで誤解されたと解釈して問題ないと思います。

つまり「誰に認められなくても、自分の仕事に誇りをもつこと」。これが最後の場面にこめられたメッセージなのでは。

 

サンチャゴ老人がたびたび見る「ライオンの夢」。

人間の中に潜む、サメのように獰猛な執着心を精一杯ねじ伏せ、海の王者としてライオンのように誇り高く生きることを追い求める信念なのかもしれません。

たとえ自分のキャリアがとっくに衰退し、残り少ない人生を迎えていたとしても。

 

「老人と海」、読んでみていかがでしたか?

意見や感想など、コメントをお待ちしています。

それでは!

 

コメント

  1. MJ より:

    初めまして

    青空文庫で老人と海を初めて読んで、
    どうもしっくりこなかったので原文で読み直して、
    やっぱりいろいろな解釈ができるんだなと改めて思い直して、
    他の人はどう思っているんだろうとネットの海を漂っていたらこのサイトに辿り着きました

    主要人物紹介のマカジキと鮫の群れの「……。」が最高だし、
    シーン別攻略ポイントのワクワク!ダレる…↓のテンション表記も面白すぎます

    個人的にはサンチャゴ翁はもっと骨太でがっしりした印象で、
    マノーリンは二十歳前後の青年と捉えています

    日本語訳もいくつか読んだのですが、これだ!っていう翻訳がないのですよね、、

    ともあれ、海外文学の入り口として非常に素晴らしいと感じました
    これからもステキな解説を楽しみにしています

    • 杜矢 A士 杜矢 A士 より:

      はじめまして。
      素敵なコメントを下さりありがとうございます。

      1つの解釈として参考にして頂けたようで嬉しいです。
      キャラクター1人とっても読み手によってだいぶイメージが変わるんですね。面白いです。
      ここしばらくYouTubeで解説動画の準備をしております。
      このブログをイラストと音声で解説したような感じにする予定です。https://www.youtube.com/channel/UCURzxOQAUBDD_2D-nsk_3uA

      僕は日本語でしか本を読めないので、原文で読めるのがうらやましい限りです。英語しかり今まで色々と語学の勉強に挑戦してみましたが結局挫折してしまったので、一つでも外国語ができる方がスゴいと思ってしまいます。

      今後もいろいろとご指導など頂ければ幸いです。
      よろしくお願いします。

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